2016.11.10
レミニセンスでは、一つ一つのお客様の水槽のデザインを一から創り上げ、ご提供させて頂いております。
毎週メンテナンスにお伺いする際、安全管理を徹底し、カルテにてお客様と確認ののち、サインを頂き、会話をはずませます。
その会話の中にお客様が思う水槽の良さや悪さ、来客された方の印象や今後やってみたいことなど、そして仕事の懸念や成功を分かち合い、助け合うこんなストーリーが日々存在しています。
今回のお客様は駆け出しの頃から信頼関係を気付いてきたお客様です。
私が駆け出しの頃、まだ数台のご契約しかなかった時のお話です。
その時の先代の代表と我々のTOJOグループで忘年会をした時のこと、代表がたまたま私の前の席で会話をさせて頂ける機会がありました。
「小西さんはどんな会社をこれから作りたいの?」などと会社を作ったこともなかった私ながら希望溢れる回答をしていたように感じます。
会話をするにつれ、代表の事務所が池袋にあり、私の事務所から自転車でも10分圏内にあることが分かりました。その刹那、私も不思議な思い出なのですが考えるまでもなく「是非
タダでもいいので水槽を置かせて下さい!」とお願いをしていました。
正直このような無茶な営業はしてはならないと意識していたのですが、「何としても置いてもらってアクアリウムの良さを知って頂きたい。」と無意識にやり取りを交わしていました。
代表は「え!うちに置いてくれるの!?」と一言。その時は無我夢中で2台の水槽を立ち上げて設置させて頂きました。
開業から3年が経ち、お客様の事務所が手狭になってきて移転の話が出るようになりました。「小西さん、新しい事務所に移転する時水槽はどうしたらいいの?」とご質問を頂きましたので一度引き上げて事務所で預かることにしました。
この時には幅45cmの大きめの水槽にバージョンアップして頂いてたので「この水槽を何か今までに見たことのないようなものに創り上げて事務所の引っ越しのお祝いにしたいな。」と考えていました。
今までの水槽は、海水魚の仕様で小型のカクレクマノミやスズメダイが泳いで、デザインは白く見栄えのよい飾りサンゴを扱ったデザインでした。
このまま設置しても同じただ同じ仕様を新しい事務所に移しただけで面白くないなと考えた私は、最も何度の高いデザインに取り組んでみようと決意しました。
それは、“サンゴと混泳ヤッコのコラボレーション・アクアリウム”でした。
普通には「一体何が難しいの?」と思われるでしょうが、このヤッコという海水魚の仲間は飼育レベルも綺麗な水を好むため、多少シビアにならなければなりませんし、ヤッコ同士の同種間で相性が合わないとボロボロになるまで追い回してケンカをしてしまいます。
サンゴはもともと水の綺麗な水質と基本的には強い照明を好みますので水の管理が重要になります。また、強い照明な分、コケも多発する可能性があります。
そして、何より“ヤッコはサンゴを突いて食べてしまう”という点です。様々な参考文献を調べてなるべくヤッコがサンゴを突かない種類を選んでデザインする他ありませんでした、
この状況下で最高のデザインをするという使命は、当時の私の中で最も魅力的で不可能に近い挑戦でした。デザインに使い勝手の良い見栄えの良いオオバナなどのサンゴはヤッコの大好物で使えず、途方に暮れていた時、仕入れ先のショップさんで見たことのないボリューム感のあるサンゴに出会いました。
“ヤナギトサカ”です。
このトサカという種類はバリエーションが多いものの、綺麗な赤や紫といった色彩の種類はサンゴ用のフードを与えなければいけない、強い照明よりさらに上のUVを含んだ照明が必要など難点が多く、丈夫な個体は色彩が地味な種類が多いというデザイナーにとって扱いづらいものでした。
このヤナギトサカを見た瞬間蛍光グリーンに光る姿や丈夫さ、迫力“上手くデザインに盛り込もう”と採用を決めました。
一方お魚の方は、ヤッコを徐々に水槽内に慣らして混泳しても大丈夫なよう試験に試験を重ね、個体の大小や入れるタイミングなどをはかり、4匹まで混泳をさせることができました。(写真に写るヤッコはフレームエンゼル・レモンピール・サザナミヤッコ・ナメラヤッコ)
設置後、お客様は見たことのない空間にビックリ!新たな出発の事務所で美しいインテリアを体感して頂き、仕事にもモチベーションにして頂けたのではないかと思います。
この一品には少なくともこのようなストーリーの魂のこもった情熱があります。
その先にあるお客様の笑顔こそがレミニセンスにとって代えがたい最高の瞬間です。
こちらのお客様はまた新たな水槽に入れ替え、次のデザインを思考しています。
また思い切って楽しんで参りたいと思います。
TOJO東京 レミニセンス
水景デザイナー 小西